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株式会社 重野体質医学研究所は、医学博士重野哲寛が創設した会社です。

人間栄養学 フード・ダイナミクス「健康な心と体をつくる食物」


医学博士 重野哲寛   米国国際臨床栄養学会 第1回日米シンポジュウム特別講演記録

■ フード・ダイナミクス 全16項目 ■
@〔食物は心と体にダイナミックにはたらく〕
A〔日本食文化崩壊と病気〕
B〔日本食文化崩壊の影〕
C〔それでもなぜ日本は世界最長寿国なのか〕
D〔洋風化した食生活は老化を早める〕
E〔血管と老化現象〕
F〔現代に蘇る古代の英智〕
G〔「神農本草経」にみる医食同源 〕
H〔フード・ダイナミクスが選んだ食品群〕
I〔現代栄養学への反省〕
J〔自然食にも問題がある〕
K〔人間栄養学・フード・ダイナミクスの誕生〕
L〔組合せを大切にするフード・ダイナミクス〕
M〔フード・ダイナミクス食品の組合せの妙〕
N〔不思議に一致する最新現代栄養学とフード・ダイナミクス〕
O〔食文化を大切にした健康な心と体をつくる食卓〕

@〔食物は心と体にダイナミックにはたらく〕


食物は、単なる“たべもの”を意味するものではありません。乳児、子供、大人など人間が食べるものは、私たちの寿命
とその内容に大きな影響を及ぼします。食物は私たちの、心と体にダイナミックに作用します。正しい食生活は、私たちの毎日の生活に必要なエネルギーと、健康な心と体を与えてくれます。

もし、正しい食生活をおこたったり、誤った食物を余分にとって栄養過剰になったり、体が要求する食物をとらないで栄養不足になったりしますと、人間の健康な体をそこなうだけでなく心までむしばまれることを、多くの例が物語っています。

戦後、日本人の食生活は豊かになりました。反面、豊かさの裏側でいくつかの病気が、小児、若年、青年層に蔓延してきました。あふれる程に豊かな食生活をおくる現代において、過去の病気といわれたビタミン不足でおきる脚気が、西日本を中心に高校生のあいだに多発しました。又骨折しやすい学童が続発し、都会では脊柱攣曲症が無気味に増え続けています。

学童の噂好が洋風になるとともに、血中コレステロール値が、欧米の学童なみに高値になるほか、若年層の成人病慢性病が姿をあらわし、若い世代の中年体質化が問題になってきました。また、美しくなろうとばかりに朝食ぬき、即席サラダオンリーの食生活で貧血になった若い女性も多くみられます。

最近では校内暴力、家庭内暴力などにみられる子供の食生活に、栄養のバランスのくずれが目立ち、以前から私が主張していたように、食物が子供の心に暗い影を落すことがようやく問題にされるようになりました。こうした現象は、小児、学童、青年層にかぎらず、成人層にも蔓延してきました。

今日では、成人病、慢性病のうち、高血圧症、脳血管障害、−心疾患、肝臓疾患、腎臓疾患、糖尿病、アレルギー性疾患、などの多くのものが想像以上に、食物と密接な関係をもつことが知られるようになりました。これらの現象の背後にあるものは、いい加減な栄養配分、栄養学に対する無関心、無知、間違った食べ方などが構成する、毎日の食生活にあることに気付きます。食物がおどろくほど短期間のあいだに、人間の体を変えてしまった例も多いのです。

A〔日本食文化崩壊と病気〕


人間の住む土地の地理条件、気象条件などいわゆる気候風土によく適合した昔ながらの伝統食をすてて、いわゆる現代風の食生活に急に変えた結果、わずかの間にいろいろの問題が続発した例として、南太平洋の小さな王国トンガのことが話題になっています。

トンガのウイハ島の住民は“健康な肥満”で知られ、100キロ級の巨漢もめずらしくありません。この国の人達はキャッサバというイモをよく食べます。イモは、筋肉を発達させ、骨格をしっかりつくりますので、筋肉が隆々と発達し、肥っていても皮下脂肪が少なくいたって健康です。この島の住民は、先祖伝来のキャッサバというイモを主食に、魚、鶏肉、野菜などの伝統食をたべています。
実際に、住民の健康状態を調査してみても、全島で糖尿病の疑いが一人だけで、健康そのものの生活をエンジョイしています。

一方、トンガ王国のもう1つの島、トンガタブという本島には、文明の波がおしよせ、急速に近代化が進み、スーパーストアが進出し彼らの食生活をすっかり変えてしまいました。彼らは、伝統食のイモ、魚、野菜を食べなくなり、代ってパン、バター、豚肉、ベーコン、ラード、塩、砂糖を大量に食べます。
もともと大食漢のお国柄、みるみる脂肪太り、糖尿病、心臓病、脳血管障害、肝疾患、腎疾患、高血圧疾患などの成人病、慢性病の患者が激増したことを、日本からの調査団が報告しています。このトンガのお話がよそごとでないような現象が日本でもおきています。

B〔日本食文化崩壊の影〕


現代日本人の食生活が怪しくなると同時に、トンガと同じような傾向があらわれはじめたのです。日本人の食生活がほぼ理想的といわれる根拠の一つに、タンパク質、脂肪、炭水化物のバランスがよいことがあげられていますが、それはあくまでも平均値の話で、個人の食事をみますと、バランスの良い人はきわめて少ないことが最近の調査でわかってきました。一般的に脂肪のとり過ぎが目立ち、とくに都市部では、食事内容や食べ方が欧米先進国型に近づいて来ているというものです。その内容をみてみますと、全般に料理の品数が減る傾向にあって、カレーライス、サンドウィッチなど、具入りの主食が多く、栄養のバランスをとるのに都合のよい、主食、主菜、副菜という日本人が長い時間をかけてつくりあげた三つの組み合わせの食文化が失われてきています。

また都市化の進んだ地区では、獣肉としての動物性タンパク質、動物性脂肪の摂取率が高く、ごほんなど主食をあまりたべず、おかず、それも肉などの動物性食品をよく食べる人が多く、学童の魚ばなれも目立ち、結果として成人病の増加に悩んでいる欧米先進国の食事のパターンに近づいていることがわかりました。

こうした食生活の変化は日本人一人当り食料供給量の推移を農林省の食料需給表をもとにみてみても、大豆、黒胡麻などの消費量の減少、米の消費量の減少、イモにいたっては、昭和五年の頃に比較して約四分の一と激減していることがわかり、大豆、黒胡麻、米、イモで構成される日本の伝統食が姿を消し、ここにも日本の食文化崩壊の影をみることが出来ます。

こうした食生活の変化と、厚生省の「主要傷病別にみた受療率の年次推移」を比較することによって、食物の人間の心と体へのダイナミックな働きかけを知ることが出来ます。
昭和二十八年以降、昭和五十四年に至る26年のあいだに、高血圧性疾患が実に10倍、精神障害は8倍に増加しています。なかでも精神障害の増加は今日問題になっている学童の暴力、非行に限らず、成人層のノイローゼ、精神疾患など、食物が人間の心に暗い影を落すことを教えてくれ無気味です。

さらに脳血管疾患10倍、心臓の疾患8倍、肝の疾患9倍、糖尿病5倍、悪性新生物4倍、喘息4倍と増加しています。死因順位と死亡率をみてみますと、昭和58年以降悪性新生物が第一位、第二位が脳血管疾患、第三位が心疾患ですから、伝統的な日本食の崩壊の結果、悪性新生物、脳血管障害、心疾患が死因の主たるものに変ったことを意味し、この点、欧米先進国と同じ傾向になったことがわかります。

C〔それでもなぜ日本は世界最長寿国なのか〕


こうした現状にもかかわらず、何故日本は今だに世界の最長寿国なのでしょうか。それは現代日本における長寿記録を樹立されておられる方々が日本の伝統食で育った古い世代だからです。百歳をこえる長寿者達は日本列島全般に居住していますが、全体として、気候の温暖な西日本に長寿者を多くみかけます。百歳をこえる長寿者たちは、若々しくとても健康で、よく働き、見た目にも椅麗で人生を大いにエンジョイしています。百歳という長寿と年輪を保つ方法について、実際に長寿を保った人々に学ぶのが順当でしょう。

長寿者たちは何でも食べていますが、ほとんどが日本の伝統的な日本食を腹八分にたべています。なかに八十歳までひどい偏食だったという方や、昔からワイン、チーズ、オートミール、ヨーグルトを摂っているというハイカラな人も例外としていますが、ほとんどが、伝統的な日本食を食べているというのが共通しています。明治十年前後生まれの方々ばかりだから日本食が日常食だったのは当然でしょう。

その習慣が今日もなお続いています。ほかに酒好きはわりあい多いのですが、タバコを喫む人は極端に少なく、食物で目立つのは、赤飯、果物、餅、野菜、卵、いも、かぼちゃ、豆、らっきょう、しいたけ、おかゆ、みそ汁、麦ごほん、酢の物、梅干し、和菓子などです。「化学調味料は使わない」「獣肉の動物性脂肪はとらない」「バターを食べない」「塩気をさける」「美食をさける」「脂こいものはとらない」「おやつを食べたらごはん半分」「時々鶏肉などの動物性タンパク質をとる」「腹八分目にしておく」などの注意がはらわれています。

また長寿者たちは多くの種類を少量づつ食べます。食べる順序は、野菜や酢の物など淡薄な味のものから、魚、鶏肉、肉などの順で、食卓には常に十品種位のものが並びますが、その大部分のものが手作りです。宴会が二日、三日も続くと一食ないし、二食の絶食もしていつも腹八分を保つようにしています。

D〔洋風化した食生活は老化を早める〕


こうした長寿者達は別にして、過去26年のあいだにより若い世代の日本人の体質は変わり欧米化しつつあるのです。日本人の現在の死因の第一位が悪性新生物、第二位が脳血管障害、第三位が心疾患であることをご紹介しました。これらの変化が食物によるものであることはよくわかりましたが、実際にどんな食物がこのような病気の原因になっているのでしょうか。それは一言でいうなら洋風の食事のもつパターン、獣肉などの動物性脂肪と、砂糖の過剰が大きな要因になっているのです。この問題についてもっと詳細にふれてみましょう。

西洋ではヒポクラテスの時代から生物学的寿命学の研究が行われてきました。「一種の自然の病気」として老化を考えてきたギリシャのアリストテレスから、「老化とはみずみずしさを失う乾燥への推移」としてとらえた現代に至るまで、老化の本態を追求した歴史があります。ここで得た結論は、老化すると血液中にレシチンという燐を含んだ脂肪が減少し、反対に、コレステロールが増加して来るという現象でした。レシチンは大豆や卵黄などに含まれる私たちにとって不可欠な大切な脂肪で、またコレステロールのある種のものは、いろいろな病気の原因になるとおそれられている脂肪です。

E〔血管と老化現象〕


コレステロールの増加が端的にあらわれる器管の第一は血管です。血管にコレステロールがたまると、血管は弾力性を失い、若さを失います。硬化した血管はやがて動脈硬化をともなって、最も重要な部位、心臓に栄養を与える冠動脈を硬化させます。その結果、冠動脈は狭窄をおこし、栄養と酸素が充分ゆきわたらなくなり、狭心症、心筋硬塞をひきおこすのです。もう一つの重要な部位である脳の血管に動脈硬化があらわれますと、脳への酸素の供給、栄養の供給がわるくなるはかりでなく、脳出血、物忘れ、頭の回転がにぶるなどの原因ともなるのです。

こうしたコレステロールの増加とともに発生する動脈硬化は、一種の病気であって、老化したから必らずあらわれるというものではありません。伝統的な日本食で育った長寿者達の血管は、実際若々しく動脈硬化を認めず、三十代四十代の若さを保っているとしばしばいわれています。

動脈硬化についても、素質との関連はあって、遺伝が多かれ少なかれ影響することはいうまでもありません。しかし、それは多くの場合、絶対的なものでなく、その人の生活様式、生活環境などの因子の方が、動脈硬化の発現に非常に大きな役割りをはたしています。とくに、カロリーの多い動物性脂肪や砂糖を毎日食べることによって、動脈硬化になりにくい、よい素質をもった人でも、やがてコレステロールの増加によって、動脈硬化をひきおこすこともあるのです。

あらゆる病気のなかで、最も重要な病気のひとつ動脈硬化症は、洋風の食事につきものです。ミルク、バター、チーズ、脂肉などの動物性脂肪と、マーガリンも大部分植物性脂肪を含んでいますが、血液中の脂肪量を上昇させます。動物性脂肪を多くとっていても、森林で労働する肉体労働者に動脈硬化のおこる率の少ないところをみると、肉体労働は一種の防衛作用をもっているということがいえます。

F〔現代に蘇る古代の英智〕


ところで、動脈硬化を起さず、病気を予防し、長寿でいられる食物ということになると、「神農本草経」という忘れてならない書物が参考になります。

私は慢性病、成人病の治療に長年たずさわってきましたが、食生活の大切さを患者さんに口をすっぱくしてお話しても、多忙だとか面倒だなどの理由でなかなか実行してくれないことが多かったのです。それならこれを召し上って下さいと、はとむぎ、真珠カルシウム、発酵食品の原材料、のびる、大豆、黒胡麻などの食品群で構成されるフード・ダイナミクス食品群を次々と開発しました。

これを臨床に応用するという、極めて積極的な食事療法により、病気から脱出する自己復元力をつけてあげることに成功しました。それはあたかも、倒れた「だるまさん」が重りを重くするとすぐ起き上がるように、多くの成人病、慢性病から、ある時は奇蹟的とも思えるような見事な回復力をみせ、治癒率が飛躍的に向上しました。

しかし、どうも私には、何故そのような結果がでるのか、現代の栄養学の知識だけでは理解出来ず不安でした。或時私の患者さんが下さった世界最古の薬学書「神農本草経」のなかに、私のフード・ダイナミクス食品群に使用した素材のすべてが記載されていることを知り、5000年の歴史のなかで確認されてきたこれらの素材の効果の明確な記載に触れ、これですっかり今までのもやもやが消えて、心からの安堵感にひたることが出来たのです。

それ以来、私は「神農本草経」のなかの食物の効用について世に広く知らしめなければと思いたち今日に至ったのです。ところで、この書物は今から約5000年前、中国の伝説上の皇帝である神農があわしたとされております。神農は数万年にわたって集積されてきた人類の生活の智恵を自ら百草をなめ、七十の毒にあたりながら、「神農本草経」という薬学書に集成したといわれております。この書物は後世に、はかり知れない巨大な影響を与えました。それ故に、神農は医学の開祖とあがめられました。「神農本草経」をみてみますと、この中に一年の日数に照応するように、三百六十五種類の草根本皮、動物、石の人間におよぼす効果が記載されています。私はこのような効果を、食物の人間に与える「栄養効果」と呼称することにしましたが、これらの栄養効果が実に簡潔に要約されています。「神農本草経」はそれ故に、人間のための大いなる「健康計画書」なのです。

G〔「神農本草経」にみる医食同源 〕


この書物では、三百六十五種のものが、三つのグループに分類されています。第一のグループは、上品とよばれる百二十種で、これらのものは、どんなに長期間、どんなに大量にたべても副作用がなく、ふだんたべているとコレステロールなどの余分な脂肪がとれ、新陳代謝がさかんになり、集中力がつき、情緒が安定し、ストレスに耐える力が与えられ、病気に対する抵抗力が付く。さらにこれらの物を毎日食べるようにすると空腹に煩わされることもなく、心身ともに軽くなり、病気にもならずに人間本来の寿命をまっとうし、長寿者になれると書いてあります。まさに現代人が健康な心と体をとりもどすのに絶好の食品群です。

こうした人間に対する食物の効果を私は、栄養効果と名づけましたが、この食物の人間に及ぼす栄養効果は、経験科学の成果といえるもので、数万年という気の遠くなるような人間の経験から生まれた生活の智恵で、しかも歴史によって裏づけられていますので、安全ですし、何よりも安心です。

H〔フード・ダイナミクスが選んだ食品群〕


ではこの書物にみられるすばらしい食品群をご紹介しましよう。それらの食品群とは、菊花、人参、うど、いも、はとむぎ、よもぎ、霊芝、ぼうふう、なつめ、ぶどう、黒胡麻、はちみつ、真珠カルシウム、れんこん、などです。

これらの上品のものは、不老長寿食として昔から親しまれてきたものばかりですが、さらに中品の百二十種のうち、病気の予防に役立ち、性を養うものとして、しょうが、くず、ゆり、わらび、海藻、だいだい、りゅうがん、うめ、にんにく、ねぎ、にら、らっきょう、にわとりの肉と卵、もつ、魚、貝、しそ葉、せり、さんしょう、くちなしなどがあげられ、さらに病気の治療に用いて効果のあるもの、すなわち下品として、大豆のもやし、黒豆、赤小豆などがあげられています。

さらに後年になって伝えられた米、発酵食品などを加えてこれらの素材がいずれも伝統的日本食に用いられてきたものばかりで、今日、日本食が世界の健康食として注目されている理由の一端を知ることが出来ます。

ここではじめて、世界最長寿国日本のにない手、伝統的日本食で育った明治生まれの世代の方々が何故長寿なのかという理由がよくおわかりになったことでしょう。「神農本草経」と出会い、東洋の経験科学大系のすばらしさに触れた私は、云い知れぬ安堵感を与えられました。そしてそれはやがて私の患者さん、私の開発した「神農本草経」のなかの食品群で構成されるフード・ダイナミクス食品群を愛用されている方々の安堵感へと広がっていったのです。

I〔現代栄養学への反省〕


栄養価とか、カロリーで知られる現代栄養学について深く反省再考することが多くなっていきました。戦後食糧難の時代には絶対的カロリーが不足し、カロリー栄養学が人々に受け入れられ、やがて高度成長時代を経て、生活が安定するとともに食生活が洋風化してゆきました。動物性脂肪の過剰と砂糖の消費量の増大は、やがて日本人の健康な心と体をむしばんでいったことは先に触れたとおりです。ここで現代人の成人病、慢性病増加のひきがねになった現代栄養学について、もう一度考えてみましょう。

最初に気付くことは、大豆、魚、肉などのタンパク質を考える時、プロテインスコアを重視し、人間にとって大豆がよいのか、肉がよいのか、魚がよいのか、こういったことに対して明確な回答を用意していないということです。次にビタミンを考える時、食品としてのビタミンよりも、ビタミン剤を重要視する考え方で、一般的に、食品を部分としてとらえ、全体としてとらえていないということです。

これは西洋の分析的思考習慣と関係があり、この方法では全体を見失う危険性をはらんでいます。私はかねて、食物の人間におよぼす効果、すなわち栄養効果のうち、成長を速くする効果のみに基準をおいた現代栄養学に疑問をいだいていました。成長速度を速くする栄養学はともすると、ふとる栄養学となり、アメリカなど先進国で肥満によるいろいろの障害をひきおこして来たのです。しかも実験の基礎に人間と代謝の違う動物を使っていることも気になっていました。

人間にとって理想的な栄養学とは、成長速度という基準のほかに、まず、人間に使ってみて確かめられた食物で、寿命をのばす効果、病気に対する抵抗力をつける効果など、もっと多面的な食の人間におよぼす栄養効果を組入れたものでなければならないと考えるようになっていったのです。

J〔自然食にも問題がある〕


一方、栄養価とカロリーを否定する自然食によって食の問題を考えてみても、食物の人間に対する働きすなわち栄養効果についての根拠が明確でなく、あいまいにされていて、明確、明噺な見解を得ることが出来ませんでした。

カロリー、栄養価を重要視する現代栄養学が、栄養過剰のふとる栄養学とすれば、自然食は現代栄養学の欠点に対するアンチテーゼとして、栄養不足の栄養学という見方をどうしてもぬぐい去ることが出来ません。
動物実験を基礎にすえ、成長速度を栄養効果の唯一の基準とした人間不在の現代栄養学と、科学性の欠如する自然食という二つの栄養学のはざまにあって、私は「神農本草経」の存在を知り、はじめて西洋医学の開祖ヒポクラテスにも想いをほせました。ここに東洋の医学の開祖、神農皇帝の精神を大切にした東洋と、西洋のヒポクラテス以来の英智を結集した新しい若さと長寿のための栄養学、すなわち人間栄養学の誕生の胎動を感じたのです。

K〔人間栄養学・フード・ダイナミクスの誕生〕


食が人間の心と体にダイナミックに作用することを知っていた私は、この新しい人間栄養学をフード・ダイナミクスと名づけました。

フード・ダイナミクスでは、人類の食の歴史が記録された5000年の時間を大切にします。さらに、科学性を大切にし、現代栄養学が明らかにした食物の栄養価と、食物の生物に対する成長速度という栄養効果の他に、食物の人間にあたえる効果、すなわち病気に対する抵抗力がつく、ストレスに耐える力がつく、自己復元力がつく、集中力がつく、情緒の安定、頭悩明噺、若さ、長寿をもたらすなど、食物のもっている人間に対する栄養効果の基準を、増やして考えることがはじめてできるようになりました。

これらの栄養効果の多面にわたる基準は、「神農本草経」と、後年この書物をもとにして記された「本草鋼目」から膨大な情報として知ることが出来ました。この若さと長寿のための栄養学、又は人間栄養学といえる新しい栄養学、フード・ダイナミクスは、食の動力学ともいえるもので、体内での“食物のはたらき”を最も効果的に発揮させて、健康な心と体を築く人間栄養学であり、また若さと長寿のための栄養学として誕生したのです。

L〔組合せを大切にするフード・ダイナミクス〕


フード・ダイナミクス研究の成果は、人々の健康な心と体づくりにとても役立ちましたが、なかでも食品の組合せに重大な秘密のあることを発見したことは画期的でした。例えば、豆腐にかつおぶしをかけたり、焼魚に大根おろしを組合せる食品相互の組合せに、実は大変な秘密のあることに気付いたのです。

豆腐にかつおぶしをかけてたべますと、豆腐に不足する必須アミノ酸、リジン、メチオニンを、かつお節の中に多量に含まれるリジン、メチオニンが補って、完全なタンパク質に変身するのです。この組合せの効果はそれにとどまりません。かつお節の中のビタミンDは、豆腐のカルシウムの吸収を20倍もたかめてくれるのです。よく焼魚に大根おろしが添えられます。焼魚の焼コゲのトリプPl、P2という物質は、発癌性をもっていますが、大根おろしを一緒にたべますと、大根おろしの中のカタラーゼとか、ペルオキシダーゼなどの酵素によって発癌性をうしなうのです。

ところで、大豆はすばらしいタンパク源ですが、大豆をたべますと、体内のヨード分を排泄することを御存知ですか。ですから、海藻を一緒に食べなければならないのです。日本の伝統食のなかにヒジキと油揚げ、大豆とこんぶ、豆腐とわかめのみそ汁などの組合せがありますが、このような組合せによって問題のおきないよう、昔から工夫されていたのです。

最近の研究によりますと、タンパク質を大量に摂る場合に、体内のカルシウムが体外に排泄されることがわかってきました。ですから、タンパク質を摂る時、同時にカルシウムをとらなければなりません。日本ではタンパク質とカルシウムを一緒にとれる小魚、つくだ煮という、すばらしい伝統食をつくりだしてきましたし、外国では肉と牛乳という組合せでこの問題を解決してきたのです。

こうした組合せの秘密を知らずに、タンパク質をたくさんたべてカルシウム源になる、小魚、野菜、海藻を全くとらないとどんなことになるのでしょうか。考えてみただけでもこわくなります。カルシウム不足は、体の抵抗力を弱くし、イライラの原因ともなり、骨や歯が弱くなります。

フード・ダイナミクスでは、健康な心と体をつくる他の組合せも多数研究してきました。例えば、にんにくをつけないステーキは、栄養効果が半減する。果物をつけない肉料理はこわい、ツマのない刺身を食べるのは危険、小魚のカルシウムを20倍生かす干しい茸、ほうれん草の短所を長所に変える胡麻、油の害を防ぐ椎茸の効果など、メニューづくりのコツを明らかにし、食卓づくりに役立ててきました。このようにしてフード・ダイナミクスでは、健康な心と体をつくる食卓づくりの基礎になる、強い体になる食べ合わせ法を研究してきたのです。

M〔フード・ダイナミクス食品の組合せの妙〕


今日、食物が原因で成人病、慢性病がアメリカ、日本などの先進国で増加しているのも、こうした伝統的な食品相互の組合せを忘れたからといえるのです。

この食品相互の組合せについての研究の発端になったものは、私の最初のフード・ダイナミクス食品を構成する食品群の配合の比率について、クリニカルデータをもとにして、その栄養効果を最大に発揮させるよう研究している過程において、組合せる食品群の量と種類によって、効果が違ってくることがわかったのです。ですから組合せの量の決定に十数年もかかってしまいました。この研究において、とても参考になりましたのが「神農本草経」の中の食品の組合せの法則でした。

皆さんよく御存知の漢方薬も、すべて、いろいろな草根木皮、動物、石の組合せによって、一定の効果を出すよう工夫されたものなのです。このように食品相互の組合せを考えるとき、体によいと思って食べていたものが、実は少しも栄養にならずに、場合によっては、マイナス効果をもたらすこともあるという、ショッキングな事実のあることにも気付きます。

組合せの大切さは、例えば、タンパク質、脂肪、炭水化物といった栄養相互の配合の比率においても大きな問題になります。植物性脂肪が体によいといって、これを大量に食べると、どういうことになるのでしょうか。こうしたことは、ほとんどの場合大きな危険をともないます。

N〔不思議に一致する最新現代栄養学とフード・ダイナミクス〕


フード・ダイナミクス研究が進展するなかで、アメリカで提出された三つのレポートが私に大きな衝激を与えました。一つはアメリカ人間栄養ニーズ特別委員会の、人間にとって最も理想的な栄養素構成がタンパク質12%、脂肪30%であり、炭水化物58%、この比率に最も近いのが日本食であるということ、もう一つはアメリカの新しい食事目標のうちに獣肉の消費を減らし、魚、鳥肉の消費をふやすこと、野菜、未精白穀類、大豆の消費をふやすよう指導していることでした。

これらのコメントは、私が現代栄養学と東洋の栄養学「神農本草経」を融合したフード・ダイナミクスで得た、より健康な心と体をつくる食事内容とほぼ同じだったのです。今年になって更に大きな衝激がとどけられました。それはマサチューセッツ工科大学のサイェンス誌上に発表されたR・J・ワートマン氏の「脳の働きを修正する栄養素」というレポートです。ワートマン氏はこの論文のなかで脳内におけるトリプトファン、チロシン、コリンの濃度を高めることにより脳の働きを修正できる。その方法として食品からトリプトファン、チロシン、コリンをピュアな形でとり出して投与することが考えられるが、より広い意味において、コーヒーが脳の活に影響を与えるようにトリプトファン、チロシン、コリンを多く含む食によっても同じような栄養効果のでることが考えられると述べてありました。

私は数年前「食べる英才教育」「受験戦争を勝ちぬく超健脳食」という書物を出版しましたが、この書物のなかで、フード・ダイナミクスが選んだ脳のはたらきをよくする食品として、かつおぶし、凍豆腐、ゆば、大豆、黒胡麻、魚及び魚の卵、鶏肉及び鶏卵などをとりあげましたが、これらの食品がいずれもトリプトファン、チロシン、コリンを多く含むことを知り、現代栄養学と、東洋の栄養学、「神農本草経」の不思議な一致に深く感動しました。

O〔食文化を大切にした健康な心と体をつくる食卓〕


ところで食卓では、各栄養素の配合の比率が、どこまでも問題になるのです。フード・ダイナミクスでは人間にとって最も理想的な配合は、一食のメニューが、タンパク質12%、脂肪30%、炭水化物58%の比率を考えています。

この比率がわかりにくい方は、こう考えて下さい。日本食のお膳を思いうかべるか、又は、ごほんを食べるときいろいろなおかずの品数を多くして、腹八分目にたべると、この比率になります。こうした組合せの法則は、いろいろな食物がお互いに影響しあいながら消化吸収されるということを意味し、食物はすべて連鎖関係にあることをあらわしています。消化吸収を害なく最も効果的に行うためには、一定の食品相互の組合せと、配合の比率の法則にしたがわなければならないということになります。

フード・ダイナミクス研究において、まず健康な心と体をつくる食品群が選ばれ、次いでこれらの食品相互の組合せと、配合の量の問題が研究のポイントになって来ました。この研究をひと口でいうと、「どのようなものを、どのように食べるか」ということでした。やがてフード・ダイナミクスによる具体的なメニュー開発が行われ、FDトライアングルメニューとして、マスコミ、テレビ、雑誌、単行本等に続々と発表されるようになりました。

この困難な問題に解決の糸口を与えてくれたのが、実は長い時間をかけてきずかれて来た、世界の食文化だったのです。人類は、時間をかけて、ゆっくりと最高の食品相互の組合せを、私たちに残してくれていたのです。私たちはこのようなすばらしい食文化を、後世に伝えなければならないのです。


ーーーーーー最後までお読み頂き有難うございました。食に少しでも興味を持って頂けたら幸いです。ーーーーーー


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